二つの意味を持つやっかいな「時間とともに用いられる副詞“才”」
副詞の“才”は、中級レベルの中国語学習者が使い方に悩んでしまう副詞の一つです。
副詞の“才”って「やっと」って意味だよね
いやいや「〜したばかり、もう~」って意味だよ
あれ?辞書にどちらの意味も載っている・・・どういうこと?
時間を表す言葉とともに用いられる“才”は頻繁に登場するのに、このように「やっと」「〜したばかり、もう~」という二つの相反する意味があるから理解しにくいのです。
でも安心してください、これから紹介するびっくりするくらい簡単な公式でこの悩みとも、もうおさらばです。
ちなみに“才”の意味を北辞郎で検索し、上から5つ目までの意味を抜粋すると、
- やっと~したばかり.やっと.たった今
- やっと.ようやく
- たった(~に過ぎない).わずかに
- ~してはじめて~.~をしてこそ~
- とても~である(・・・他~11まで意味が掲載されている)
上記1、2のどちらにも「やっと」があるってどういうことやねん?
“才”の用法についていろいろと解説してくれているサイトはありますが、この矛盾とも思えてくる二つの意味の使い分けだけに絞り込んで解説してくれているサイトもなかなか見つからない。
結局のところ文の全体を読んでそれからどちらの意味か推測しなきゃならないの??
中国人が教えてくれた時間とともに用いられる“才”の使い分け公式
悩みに悩みまくっていた状況に陥っていた私は中国人の先生に「“才”にはなんで相反する二つの意味が割り当てられているのだ、わかりにくいったらありゃしない」、と不満を漏らしていたら、簡単ですよそんなの、と非常にシンプルな以下の公式を教えてくれました。
時間+才 「やっと.ようやく」
才+時間 「もう.やっと~したばかり」
えっ!?こんなに単純なのっ?
そうなんです。ルールはとてもシンプル、“才”が時間を表す言葉の前にあるか、後ろにあるかで意味が違ってくる。
「時間+才」は時間が遅いという感情がこもり、「才+時間」は時間が早いという感情がこもるととらえるとわかりやすいです。
時間とともに用いられる“才”の基本例文
それでは簡単な例文から見ていきましょう。
・四点多才回来 (時間+才)
4時になってやっと帰ってきた。(帰ってくるのが遅い)
・才四点多就回来了 (才+時間)
4時過ぎにもう帰ってきた。(帰ってくるのが早い)
・现在才晚上九点,不晚。 (才+時間)
(いまはやっと9時になったばかり、遅くない。)→いまはまだ夜の9時だ、遅くない。
・我今天十点才起床。(時間+才)
私は10時にやっと起きた。
・她第二天凌晨4点多才回来。(時間+才)
彼女は次の日の朝方4時になってやっと帰ってきた。
時点と“才”の組み合わせ例文
基本例文では“四点”や、“晚上”、“凌晨”など具体的な時間、時間帯を表す言葉との組み合わせで“才”を使っていましたが、年齢や、物事が起こったり、動作を行った「時点」とも組み合わせて使うことができます。
・这个孩子才六岁,已经认得不少字了。(才+時点)
この子はわずか6歳でもうたくさんの字を知っている。
・他三十岁才上大学。(時点+才)
彼は 30才でやっと大学に入った。
・老王参加工作才十七岁。(才+時点)
王さんが仕事に参加したのはわずか 17歳の時だった。
・长大以后我才明白,父亲的沉默是对孩子最深沉的爱。(時点+才)
大人になってからようやくわかった、父の無言は子供に対する最も深い愛情だ。
数量と“才”の組み合わせにも公式の考え方を応用する
ここまで来たら勘のいい方は“才”の修飾の仕方の違いによるニュアンスの違いがだいぶつかめてきていることでしょう。
時間、時点だけでなく数量と“才”との組み合わせも見ていきましょう。
まずは以下の文。わかりやすく「30分間」という時間の数量から。
・那篇文章,他半个小时才念完。(数量+才)
その文章を、 彼は 30分間でやっと読み終えた。
“才”が後ろにあることで、数量が多いなぁ、という意思が入ってます。この文のケースは時点ととらえても分かりやすいですね。
・小王身高才一米七。(才+数量)
王君は身長がたった 170㎝である。
“才”が前にあることで、数量が少ない、つまり背が低いなぁ、という意思が入ってます。
・他才2岁。(才+数量) 彼はまだ2歳です。
年齢を数量としました。この文のケースも時点ととらえてもいいでしょう。
・从简历上看,还有半年才毕业。(数量+才)
履歴書によると、卒業までまだ半年あるんですね。
・这道题他看了两遍才看懂。(数量+才)
この問題を彼は 2度読んでやっとわかった。
・他才跳了两次,还有一次机会。(才+数量)
彼は2回しか飛んでないよ、まだ一回チャンスがある。この文は“跳了两次”の句を修飾しています。
因果関係を表す文に使われる“才”
時間とともに用いられる“才”の使い分け公式の考え方は因果関係を表す“才”の使い方にも応用すると、文の意味を理解しやすい。
要因(出来事、動作、経緯、事情…)が先に述べられて、後ろの“才”を使った句で受ける文。お判りでしょう、「時間+“才”」で「やっと、ようやく」という公式でした。
では「要因+“才”」の場合も『(要因)があって、「やっと、ようやく~」』という意味合いになるという感覚、もう身についてますよね?
・多亏了朋友们的支持与鼓励,我才顺利完成了学业。
(「多亏了朋友们的支持与鼓励」(要因)+才)
「友人たちのサポートと励まし」があって、やっと卒業
↓
友人たちのサポートと励ましのおかげで、順調に学業を終了しました。
・因为有了老师的谆谆教导,我们才收获知识。
先生の指導があるからこそ、私たちは知識を得ることができる。
・爱需要用心经营,这样才不会枯燥。
愛は心を込めて営まないといけない、そうしてこそ枯れしぼむことがない。
これらの応用がしっくりくると、以下の決まり文句も理解しやすいでしょう。
・怎么办才好呢?
どうすればいいのでしょうか?
只有~才(~してはじめて)のお決まりの言い回しの中の“才”も今はだいぶニュアンスがつかめているでしょう。
・只有扩充人才队伍,企业才能向前发展。
人材を拡充しなければ、企業は前に向かって発展できない。
まぎらわしい例
さて、紹介した公式、万能であるかというとそうでもないケースがあります。言語を学ぶ上でこういうことは往々にしてありますので割り切りも必要です。
以下のような例文と日本語訳が、とあるテキストに掲載されていました。この日本語訳、混乱するでしょう?
・我上周才去过大阪。
私は先週大阪に行ったばかりだ。
これは公式に従って意訳すれば「私は先週になってやっと大阪に行ってきた」ではないの?
“上周”+“才”の並びになっているのでそう思いたくなりますが、この場合“才”が修飾して強調しているのは後ろの“去过大阪”の句なのです。そのため「~したばかり」と訳されています。
中国語のレベルが上がってくると、文の前後関係から何を強調しようとしているのかを掴めるようになりますのでそれまでは例外もある、という認識にとどめておいていいでしょう。まずはざっくり“才”の感覚を身に付けることを優先で。
同様に以下の文も句を修飾しています。
・天津我才去过两次。
天津はわたしは2回しか行ったことがありません。
この“才”は“去过两次”を修飾して「~しか」と訳されています。数量への適用で挙げた“跳了两次”と同様なのでこちらは迷うことは無いですね。いずれのケースも“才”があって後ろの部分を修飾なので時間であれば早い感覚、数量であれば少ない感覚であるのは公式の考え方と共通するところがありますので、多くの文例に触れていくと意味がとらえやすくなります。
まとめ
“才”には「~副詞」のように、いくつかの種類の副詞用法の名称がつけられていて、文法書や解説ブログなどに解説が書かれていますが、ここでは時間との組み合わせに敢えて絞り込みました。
私個人が、中国人の先生に教えてもらった時間との組み合わせ公式で“才”を理解してから、その他の用法も一気にニュアンスが理解できるようになったという経験があるからです。
時間との組み合わせ公式は“才”の理解のとっかかりとして最適なのです。
ですから、この記事の解説を見て、一部の方は「ちょっと強引なこじつけじゃないか?」と思われる方も中にはいるでしょう。特に中国語上級者がそう感じるかもしれません。
しかし、このブログの目的は中国語の学者になることが目的でなく、なるべく最短で中国語を使いこなせるようにする、を主眼に置いていますので、何よりもニュアンスを掴むことを重要視しています。
この記事が“才”の理解を深める入り口となれば幸いです。またこの記事でニュアンスを理解してから他の参考文献、ブログなどを読むととても理解が格段に向上するでしょう。
中国語ブログには“才”を詳細に解説してくださっている方が沢山いらっしゃいますので、そちらもぜひ参考にしてください。一緒に解説されることの多い“就”、“只”とのニュアンスの違いなども調べると良いでしょう。