ただの訳本と侮るなかれ、意外にも?まっとうな学習書 IBC対訳ライブラリー「中国語で読む」シリーズ

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IBCパブリッシング「中国語で読む シャーロック・ホームズ」

IBCパブリッシングから出版されているIBC対訳ライブラリーの「中国語で読む」シリーズ。ただの訳本かと思いきや、れっきとした「中国語学習書」の構成となっていました。

IBC対訳ライブラリーの「中国語で読む」シリーズは、まだ三冊しか出版されていませんが、物語を楽しみながら中国語を学ぶのにピッタリの学習書です。

私は「シャーロック・ホームズ」を読んでみました。中国語の中級レベルの学習者でも十分読みこなせる内容となっていますのでざっくりとその中身を紹介していきます。

目次

対訳本なれど、しっかり学習書の形態をとっている「中国語で読む」シリーズ

世の中には中国語教材が数多あります。文法書しかり、汉语口语速成シリーズのような中国の語学大学が出版しているようなテキストしかり。

いずれもしっかり学べば確実に中国語力は身に付いていきますが、いかんせん内容が面白いわけではない(笑)

会話の一部分だけを切り取ったシチュエーションだったりして、その場面の背景がいまいち想像しづらかったり、「唐突な発言だな、この人」みたいなのが多く、読んでいて「もう少し物語の世界に没入して中国語を学びたいんだけどな」と思ったことはありませんか?

今回取り上げる中国語で読むシリーズの三冊はそれぞれ、 コナン・ドイルの「シャーロック・ホームズ」、アガサ・クリスティーの「オリエント急行殺人事件」、サン=テグジュペリの「星の王子さま」

「星の王子さま」は少し毛色が違いますが、「シャーロック・ホームズ」と「オリエント急行殺人事件」はミステリー、サスペンスのカテゴリーの話なので展開も早く、楽しみながら読める内容でしょう。

(因みに「星の王子さま」はAmazonのkindle版が2025年1月中旬まで10%オフの期間限定キャンペーン価格となっています。他の二冊に比べて人気がないのかな?)

「シャーロック・ホームズ」には5編のストーリーが収録されています。

「中国語で読む シャーロック・ホームズ」目次
「中国語で読む シャーロック・ホームズ」目次

各ストーリーのページの基本構成は、見開き1ページの左に中国語、右に日本語訳となっています。

「中国語で読む シャーロック・ホームズ」のページ構成
「中国語で読む シャーロック・ホームズ」のページ構成

左側の中国語のページの下部欄外には難易度が高い単語の語注が載せられています。

音声は各話の冒頭部分に付されているQRコードを読み込んで(上記画像の赤丸で囲った部分)、ストリーミングページを開いて聴くこともできますし、音声ダウンロードリンクも巻頭の本の構成の説明部分に掲載されていますのでPCで再生することも可能です。

「中国語で読む シャーロック・ホームズ」音声ストリーミングページ
「中国語で読む シャーロック・ホームズ」音声ストリーミングページ

ちなみにAmazonの商品ページの「サンプルを読む」からも最初の10ページほどを確認することができ、4ページ目の下部に音声ダウンロードのURLとQRコードも掲載されていますので、音声だけ確認したい方はAmazonの商品ページのサンプルをご参照ください。

音声は5編のストーリーすべて同一男性の声。本の中に「録音 羅漢」との記載があったのでこの本の中国語訳・解説を担当した羅漢さんが朗読音声まで担当しているのでしょう。

各ストーリーとストーリーの間には、そのストーリーで使用された表現の中で文法的に参考になるものを「覚えておきたい中国語表現」としてピックアップして解説しています。

例文をいくつか挙げてあるので使い方を学びやすいですね。

「中国語で読む シャーロック・ホームズ」覚えておきたい中国語表現ページ
「中国語で読む シャーロック・ホームズ」覚えておきたい中国語表現ページ

ここで解説されている文法は私は大体知っていたので大体HSK5級~、中検2級~あたりのレベルのものが中心でしょう。

しかし、最後のストーリーで出てきた“~自不必说”などは初めて見る言い回しでしたので時折少し上のレベルの表現も解説してくれています。

“~自不必说”は始めて見た
“~自不必说”は始めて見た

「中国語で読む」シリーズの良いところ、いまいちなところ

「中国語で読む」シリーズのここが良い

「シャーロック・ホームズ」はじっくりと読みましたが、残りの「オリエント急行殺人事件」、「星の王子さま」は書店でパラパラと目を通した程度での総合的な雑感ですのでその点ご了承ください。

文章が割と平易で読みやすい

先ほど文法解説の項で触れたように使われている文法はそれほど難しくはありません。単語も全般的に易しめのものを多用しているので読みやすくなっています。

中国語の小説などは割とAmazonでも売っていたりして、昔に比べ求めやすくなってはいるのですが、ガチの小説だと1ぺージの中にわからない単語がわんさか出てきて辞書を引きまくりでなかなか読み進められず、途中で挫折しがちです。

あくまでも学習書としての読み物としてとらえると、「中国語で読む」シリーズはちょうどいいレベルなのです。

ただし、「シャーロック・ホームズ」は事件を扱うストーリーなので時折法律、医学、科学といった分野の語彙も出てきますのでそれらの語句は欄外の語注をしっかり参照しなければなりません。

とはいえそれらの語句は頻出するわけではないので新しい語彙を学ぶにはちょうどいい塩梅ではないかと。

対訳が見開きで参照できるのはすごく便利

本書で使われている単語の大半を比較的平易なものが占めているとはいえ、時々「これはどういう意味なんだろう?」「これはどう訳すの?」というフレーズに出くわします。

中国語ではフレーズに使われている単語のほとんどが比較的簡単な単語で構成されたフレーズであるのにもかかわらず、独特な言い回しになっていて訳し方が全く見当がつかないこともしばしばあります。

そんな時すぐに見開きページの右側の日本語訳と照らし合わせることで「ああ、こういう意味だったのか!」「このフレーズはこういう風に訳すのか!」とすぐに解決でき、新たな言い回しを学ぶことにつながります。

楷書体のフォントも読みやすい

「中国語で読む シャーロック・ホームズ」読みやすい楷書フォント
「中国語で読む シャーロック・ホームズ」読みやすい楷書フォント

これは完全なる個人的な好みですが、私は中国語の一部のテキストでよく用いられている楷書のフォントが読みやすくて一番好きなんです。

本書の中で用いられているフォントも同じものなので、もうそれだけで「読みやすいぃ~」と、読み進めていこうという気持ちを高めてくれるのです。

上記の画像中のフォントを目にして私と同じ感想を持った方も少なくないのでは?

「中国語で読む」シリーズのここがいまいち

欄外の語注にはピンイン振り仮名を付けて欲しかった

新出単語は発音とセットで覚えてなんぼなんです。せっかく欄外に語注があるのに、結局辞書でその単語の発音を調べなければならないのは二度手間です。

「中国語で読む シャーロック・ホームズ」欄外の語注
「中国語で読む シャーロック・ホームズ」欄外の語注

特に上記の画像の語注の例のように拿破仑「ナポレオン」とか扑克牌「トランプ」(トランプ大統領のことではないですよ(笑)。トランプ大統領は特朗普 tè lǎng pǔです。)のような固有名詞はピンインも付記してほしいですよね。

こういう時、発音がわからないので結局辞書アプリなどで手書き入力して調べなければならず、手間がかかってしまうのはマイナス。

上級者は日本の小説や漫画の中国語訳本で中国語学習にチャンレンジ!

ここまでで紹介したように「中国語で読む」シリーズは「読みながら学ぶ」学習書としては使い勝手の良い本となっています。

ただいかんせんまだ三冊しか出ていない‥‥。

「もう少しレベルの高い本があれば‥‥」、とか「出来ればもっと自分の一番好きなジャンルや内容のものを読みたい!」

そんな方は自分の好きな日本人作家の中国語翻訳版にチャレンジしてみて下さい!

著名な作家の中国語版、結構出版されているんですよ。

東野圭吾作品を例にとる

中国でも絶大な知名度を誇る東野圭吾

ミステリー小説繋がりで東野圭吾の小説の中国語版を例にとってみましょう。(というか単に私の好きな作家さんというだけなんですが。)

東野圭吾は中国でも知名度はかなり高いようで、今まで会った中国人に「東野圭吾って知ってる?」って聞いたところ大体7割くらいの人が知っている、と答えたくらいの感覚です。

↓以下の記事が参考になります。

中国で知らない人はいない? 「ガリレオ」原作者・東野圭吾は社会現象を招く超人気作家 : どうなってるの?中国映画市場 – 映画.com https://eiga.com/extra/xhc/47/

また、私も観たことがあるのですが、日本版「容疑者Xの献身」は中国語版で「嫌疑人X的献身」として映画化されています。

(今回初めて知ったのですが、韓国でも「容疑者X 天才数学者のアリバイ」として映画化されていたのですね!)

キャストは湯川役に王凱(映画中の役名は唐川)、石神役に張魯一(映画中の役名は石泓)、花岡靖子役にルビー・リンこと林心如(映画中の役名は陳婧)など。

張魯一は原作もドラマも世界でヒットした「三体」で主役の研究者、汪淼(ワン・ミャオ)を演じていましたね。

ルビー・リンは台湾の女優で、2021年~2023年にかけてNetflixで配信が始まった大ヒット台湾ドラマ「華燈初上-夜を生きる女たち-」で主役を演じていました。

このドラマが放送された直後は台北の林森北路のスナック街を案内する番組が組まれたり、スナックのママがスナック街を案内しながら自分の「スナック人生」を語り聞かせるツアーなんかもあったようです。

誇張ではなく社会現象になっていたそうで、日本独特のスナック文化に台湾の人たちがドラマを観て興味が湧いたらしいですね。

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