今まで中国語慣用句を本腰入れて学んだことがなく、初めて中国語の熟語や慣用句を学ぶという人にとって今回紹介する「新装版 中国語 四字成語・慣用表現800」(三修社)はまさにうってつけな一冊となっています!超〜おすすめです!
「800」という数字を見て若干うろたえるかもしれませんが、私はじっくり3カ月くらいかけてやってみたところ、結果この本で勉強して大正解!と感じました。
特に前半パートを終えたあたりで中国語のドラマを観ていて「あ、この言葉本に載っていたやつだ!」と気づいたシーンが実に多かったのです。
中国語では慣用句、成語の学習は特に重要
「慣用句なんてそんなに覚えなくても基本単語だけ使えれば会話できるし、無理に覚えなくてもイイっしょ」、と思われる方も多いかもしれません。
確かに、我々日本人同士で普段の日本語の会話で四字熟語をふんだんに使ってくる人がいたら、「なんかいけすかねぇ奴だな」、と感じてしまいます。
しかし、振り返ってみると、我々も普段から外国人から見たら難しそうな熟語を当たり前のように使ってはいます。
例えば「自業自得」。これなんかは我々日本人からしたらごくごく単純で当たり前に使っている熟語の一つとしか思わないですよね?
自業自得を違う言葉で表現するのはとても面倒でしょう。ましてや外国人にはまず「業」の概念から説明しなきゃならないなど余計に面倒になります。
この例のようにどの言語でも熟語を知っていれば複雑な事象を一言で表現することができるわけで、中国語の熟語の中にも同様に知っているだけで表現、コミュニケーションが格段に楽になるものがたくさんあるのです。
ましてや中国語は日本語よりも普段の会話で慣用句、熟語がより頻繁に出てくる言語です。
そういった意味でやはり中国語の慣用句、熟語を覚えていくことはとても重要なのです。
「新装版 中国語 四字成語・慣用表現800」の基本情報
価格
Amazonの価格 : Kindle版 (電子書籍) ¥1,870 (19pt) 単行本版(ソフトカバー) ¥2,420
ページ数など
ページ数 : 176ページ
サイズ : A5判(148mm×210mm)
2色カラー : 青色ベースに黒字テキスト
単行本版のAmazonの商品ページで「サンプルを読む」をクリックすると、表紙、パート1、パート6、中国語索引の部分が数ページ確認できるようになっています。
ただし、このサンプルは新装版に改定される前の版なので、カラーは赤色ベースのものが表示されるので発売されているものとは異なるのでご注意ください。
音声
音声CD付属。audiobookアプリでも再生可。またはaudiobookの該当ページから1ファイルずつmp3ファイルまたは一括ダウンロード可能。(※要会員登録)
「新装版 中国語 四字成語・慣用表現800」の構成を一言で例えるなら、中国語版「速読英単語」
「新装版 中国語 四字成語・慣用表現800」のパート構成
本書は全部で6パートで構成されています。
パート1~パート3 会話で覚えようパート
パート1からパート3は「会話で覚えよう」パートとなっており、 ズバリ例えるなら中国語版「速読英単語」または中国語版「DUO」と言えます。会話ダイアログの構成にこれらの英単語帳と同じ方式を採用していて、このパートの最大の売りとなっています。
1ページの上半分に学ぶ成語や慣用句が大体4つ記されており、その下半分には中国語会話ダイアログがあり、会話ダイアログの中に自然にその上部の4つ成語や慣用句が組み入れられて使用されています。
これはまさに「速読英単語」方式でしょう。
一度に4つの慣用句を効率的に覚えることができるのです。
会話ダイアログ形式のショートストーリーの中に成語、慣用句が散りばめられているので、どのような意味合いで使われる言葉なのか理解しやすく、記憶に残りやすいのです。
そうなんです、「あれ?この慣用句どういう意味だっけなぁ」という時に、「そういえば本の中ではこれこれこういう会話の中で使っていたな」という風にストーリーを最初に思い出し、そこから使われていたフレーズを思い出すことで意味を思い出しやすくなっているのです。
一般的なシンプルな単語帳とかだと、単なる日本語の意味の併記だけだったりしてどんなシチューエーションで使うのかがわかりづらいのです。
このパートの音声の構成は、まずページ上部の語句が中国語 → 日本語の順で読み上げられます。
その後下部の会話ダイアログが流れます。
速度は私個人的にはそこそこゆっくりに感じました。少し遅いな、とか速いと感じる人はプレーヤーで速度を変えて再生すればよいだけです。
各ファイルには01、02、03…のように通し番号しか振られていません。
パート4、パート5 用例で覚えようパート
パート4、5は語の右側に日本語訳、そしてその下に直訳と中国語の用例(ピンイン付き)と日本語訳という構成になっています。
「直訳」は役に立つものもあれば、「直訳がこれで、それでなんでこの意味になるの?」と感じる語も多く、そこまでしっかり見ておく必要はなさそうでした。
このパートと、あとパート6には音声ファイルはありません。
このパートの語は一般的な単語帳と同様紙などで隠して覚えるという古典的なやり方で臨むしかありませんね。
とはいえこのパートに掲載されている語もかなり出現頻度が高いものばかりなのでしっかり学んでおいて損はありません。
パート3までみっちり4周くらいやって、そのパートまでを完全に覚えたという段階に進んだらパート4以降に取り組むのが良いでしょう。
ちなみにパート5の四字成語で出てくる語の中には、HSK6級指定の四字成語もかなり多く含まれているので、HSK6級の勉強を済ませている人にとってはパート5はさっと終えることができます。
この本に手を付ける前にHSK6級向けの単語帳を入手し、後半のごく一部分に掲載されている四字成語の部分だけを事前に学習しておくと、「新装版 中国語 四字成語・慣用表現800」をスムーズに進めることができます。
HSK6級向け単語帳の比較記事も過去に書いていますので、そちらも併せてご参考ください。
パート6 中国語と日本語の類似表現
このパートは「中国語と日本語の類似表現」ということで、収録されている大部分の語が字を見ただけで意味が類推できるものが多いです。
例えば“马耳东风”を見たら、「これって馬耳東風のことじゃない?」といった語や、同様に“虎视眈眈”→「虎視眈々」そのまんま、といった語もあります。
というわけで、このパートには例文は掲載されていませんが日本語訳がさらっと掲載されている程度です。それでもそれくらいで充分学習するに足る構成です。
ちなみに日本語の多芸多才、中国語だと“多才多艺”のように逆になっています。
このように微妙に順番が違う語もこのパートに掲載されていますし、この種の日本語と順序が違う語を紹介したコラムも設けてあります。
目次と索引
復習する上で軽視できない「目次と索引」。単語を見返したい時にすぐに目当ての語のページにたどり着けないとイライラしますよね。
目次はページごとに一行空白を空けて記載されているので、どの会話ダイアログにでてきたのかがわかりやすくなっています。字の大きさの割に若干フォントが太くてちょっとつぶれ気味に見えてしまうのは残念。
索引はピンインアルファベット順で、フォントは目次のものよりも見やすくなっています。
それで、これらの索引と目次なんですがこの本に限らずすべての中国語参考書、単語帳で困るケースがあるんですよね。
それは、語の先頭の文字は分かっていないんだけど、何となく真ん中や後半の漢字が思い浮かぶとき。
あれなんだっけなぁ、と調べたくても先頭の文字がわからなければ索引は役に立ちません。
そんな時に役立つエビングハウスの忘却曲線チェックシートをこの本でも作成しました。(エビングハウスの忘却曲線チェックシートは先ほどの関連記事で紹介した単語帳比較の記事中の一番最後の方で紹介しております。)
忘却曲線チェックシートは後述しますので、是非最後まで読み進めて下さいね。
「新装版 中国語 四字成語・慣用表現800」を活用した勉強の仕方のコツ
パート3までをまずは終えることを目標に
この記事のタイトルで謳っていますように、入門編にピッタリなのですが、いきなり「一冊まるまる完璧に終えてやるぞ!」という意気込みはまずは捨てましょう。
そもそも中国語学習者にとって多くの慣用句は字面のみから意味を推測できないものも多く、単純な「暗記」作業を強いられる割合が高いです。
例えばこの本のパート5に出てくる栩栩如生、泾渭分明、模棱两可などは後半の2文字は何となく日本語の漢字の意味から類推できますが、前の2文字は一体何を意味しているのか皆目見当もつかないものばかりです。
正直に白状しますと、私はこの本を入手した当初なかなか気が進まず、手を付けていませんでした。新しく漢字を覚えるのが耐えられなくなりそうで、そんな単純な作業はキツくてやりたくないという理由からでした。
でも結局は外国語っていうのは地道に覚えていくしかないんですよね。ある程度覚悟を決めて取り掛からねばなりませんが、まずは会話ダイアログが載っているパート3までやろう、それくらいハードルを下げて取り組んでください。
パート3までですと、目次に載っている成語、慣用句の総数は297語となります。(注釈として紹介されている語、途中のコラムなどで紹介している語は除いています)
1日3ページペース(12語ペース)で、途中勉強の時間が取れない予備日などを考慮しても1ヵ月で終わります。
パート3までまずは「やりきった感」を味わうことを目標にしましょう。
そして、この本の良いところはそんな「やりきった感」という単なる自己満足にとどまらず、パート3までの部分に利用頻度が特に高い語が収録されているので、このパートまでを終えると中国語の文章やドラマを見ている最中にこの本で学習した語に気付くことが頻繁に起こるのです!
例えば私の好きな台湾ドラマシリーズの最佳利益のシーズン2を例に挙げましょう。
エピソード3の中盤で無罪判決が言い渡された宗教団体の教祖に遺族が抗議するシーンで、遺族が“逍遥法外!”と叫んでいました。
“逍遥法外”は「新装版 中国語 四字成語・慣用表現800」のパート1の23ページに掲載されており、「犯罪者が法の制裁を逃れて、のうのうとしている」という意味です。
ドラマを見ていてスッと意味が頭に入ってきたと同時に、慣用句を知っているとやっぱり中国語の理解力が格段に上がるんだなぁと実感したのでした。
※↑最佳利益のシーズン2とシーズン3がYouTubeで公開されています。シーズン1が一番面白いんですが、シーズン1はHuluで配信されており、YouTubeでは公開されていないようですね。シーズン1の中古DVDなどは売られているようですが、べらぼうな値段がつけられていました。
以上の例のように学習効果を実感できると、人間てものはさらに学びたいという気持ちが高まりモチベーションにもつながりますね。
ここまで来ると、残りのパート4、5、6もまぁやってみようかな、というふうに重い腰も少しあがるでしょう。
エビングハウスの忘却曲線チェックシートを活用しよう!
HSK6級単語帳の学習用に続き、「新装版 中国語 四字成語・慣用表現800」でもエビングハウスの忘却曲線チェックシートを作成しました。
詳しい使い方は上のリンク先のHSK6級単語帳比較記事の使い方の個所に書いてありますのでご参照ください。
中国語 四字成語・慣用表現800の忘却曲線チェックシートのGoogleスプレッドシートリンク
まずは上のGoogleスプレッドシートのリンクを開いて、ご自身のGoogleドライブにコピーを保存してください。
ファイル名は「HSK6級目次チェック表 Share用②」となっていて、最初にHSK6級単語帳用のチェックシートが表示されているかもしれません。ウインドウ下部の「中国語 四字成語・慣用表現800」を選択して表示させてください。
参考書は4周以上やれば記憶に定着する、というが「4周以上」のやり方が大事
多くの受験予備校の講師はこう言っています。「参考書は4周以上こなせば記憶に定着する」。
英語教育の権威、関正幸先生も同じ参考書を何周もやる事を進めていて、4周目から内容の定着度が急上昇すると述べています。
ではこの「4周以上」どのようにやるのが正しい「4周以上」なのか?
「4周」と聞くとマラソンレースを想像して、1周のコースを走り切って、それを4回繰り返すととらえてしまいがちです。
しかしこのやり方は脳科学的に非常にもったいないやり方をしていることになります。
多くの方は参考書を買って、「よし!4周頑張ってやるぞ!」となったとき、途中で引き返すことなく一気に突っ走ろうとしてしまいがちです。
上のエビングハウスの忘却曲線の図を見てみるとわかると思いますが、「1周突っ走り型」のやり方を用いて、「新装版 中国語 四字成語・慣用表現800」を使って1カ月かけて1周目を終えたとしましょう。
そこからやっと2周目をやる場合、結局のところ79%忘れている状態でまたやり直す、もうほぼ「ゼロから再スタート」みたいなものでとてももったいないことをしている、という事です。
そこでエビングハウスの忘却曲線チェックシートを活用するってわけです。
やり方はすごく単純です。1カ月かけて1周やるというペースは維持しつつ、復習タイミングで設定した日数経過したパートをちょこちょこ復習する、というふうに新しい部分の学習と復習とを並行して行うのです。
例えば、先ほどの「エビングハウスの忘却曲線チェックシートの使用例」の画像を拡大して見てもらいたいのですが、7月の中盤に「新装版 中国語 四字成語・慣用表現800」の学習を始めています。
そして7月末ごろの進捗では大体110番台くらいを行っていて(画像下面切れていますが)、そのタイミングで同時に赤でアラート表示されている1~44番台を5回目の復習タイミング(15日後)で見返し、さらに88番~の語については1回目の復習タイミング(1日後)を行います。
※画像の例では初日に張り切って多くやりすぎました。並行復習も考慮にいれて1日3ページ程度にとどめておいてください。中国語学習に全振りしている学生さんだったり、現在中国に留学中の方だったら1日6ページペース位でもいけるかもしれません。
このように常に復習と新規学習を並行して行う、このやり方だって立派な「4周」なのです。しかもただの「4周」ではなく、非常に学習効率の高い「4周」なのです。
今回紹介したシートを利用した場合、同じパートを合計7回目を通すことになっています。
ですので、最初の1回目は無理に「1発で覚えてやるぞ」と根詰め過ぎず、さらっと音読したり、一回見たら隠してその字を書けるかチェックしてみたりする程度にとどめておいてください。
2回目からは音声を聴いて字がなんとなく思い浮かぶかチェックして見て下さい。その時点で字が書ければ理想ですが、ぼんやり「こんな感じの字だったなぁ」でもいいですし、そもそも書けることにこだわらない人は、音声を聴いて字と意味が思い浮かぶかチェックするだけで良いでしょう。
こんな感じで繰り返していくと4、5回目以降からは音声を聴いてすぐ字が思い浮かんでくるようになります。そうなると復習にかける時間もかなり短くなります。
通勤やランニング中に流し聴きするだけでも十分復習となります。
チェックシートは単語検索にも活用できて便利
英語の単語帳を学生時代に使ったことがないという方はほとんどいないでしょう。
英単語の場合スペルの記憶があやふやな単語は、頭文字は覚えているんだけど、そこから後ろは何だったけなぁ、というパターンが大半だったと思います。
その場合はアルファベット順索引から簡単に調べられて、目当ての単語をすぐに探し当てることができます。
ところが中国語の慣用句の場合、英単語と違って中間、後半の漢字は何となく記憶にあるけど、全体はどうだったっけな?という”あやふやパターン”の方が多いです。
この場合目次や索引から探すのはとても困難で時間がかかり過ぎてしまいます。最悪索引の頭から最後の方まで片っ端から目を通さなくてはなりません。
そこで今回作成した忘却曲線チェックシートを活用します。
例を見ていきましょう。「新装版 中国語 四字成語・慣用表現800」で学習済みの語で、
「そういえば、なんだか怒るとか恥ずかしいみたいなシチュエーションで顔が赤くなる、って感じの意味の慣用句あったよな?あれなんだったけなぁ?」
「そうだ、耳赤”ěrchì”が語の中に含まれていたんだよなぁ」
このような場合どうやってその目的の語を見つければよいか?
普通の書籍の索引や目次だと、単語の先頭の文字がわからないと調べようがないでしょう。
そこで「忘却曲線チェックシート」を開きショートカットキー「Ctrl+F」(または「編集」メニューから「検索と置換」をクリック)押してください。
検索フォームに「耳赤」と入力して検索すると
トラック56(218個目)の「面红耳赤」がヒットして、「ああ!これか!」と一瞬で探し当てることができるのです。これをもとにすぐに「新装版 中国語 四字成語・慣用表現800」の該当ページを開いて確認できます。
「面红耳赤」の意味は「恥ずかしさなどで顔が真っ赤になるさま」。
ちなみに、このケースでさらに記憶がおぼろげで「赤」だったか「红」だったかどっちの字だか忘れたって場合も、1文字だけ入力して検索してもいくつかの候補に絞れます。
「赤」なら2個、「红」は5個ヒットします。
「红」でヒットした中に「脸红脖子粗」があり、こちらの意味は「怒ったり興奮したりして、顔が真っ赤になるさま」
このように似た意味の漢字を使った別々の慣用句などを比較して意味を再確認するのにも役立ちます。どっちが恥ずかしい時で、どっちが怒った時だったっけ?とたびたび混同しやすい語はこまめに見返しておかないといけませんね。
※ちなみにこの検索方法はHSK6級単語トレーニングブックの記事で、ピンインpdfを使った便利な検索方法でも紹介したやり方に似ています。
「新装版 中国語 四字成語・慣用表現800」の良いところ、いまいちなところ
上で紹介した「新装版 中国語 四字成語・慣用表現800」の特徴以外で気づいた点などまとめます。
「新装版 中国語 四字成語・慣用表現800」の良いところ
類似表現、反対表現、参考表現をこまめに表示して教えてくれる
単語や熟語を勉強していると、「あれ?この語と似たような意味見たことあるなぁ、なんだっけなぁ?」とか「ちょうど正反対の意味の語あったよな?」ということはよくあるでしょう。
この本に収録されている語なら掲載ページ情報も付いています。すぐにページを遡って確認できるのはとても便利。逆に前倒しで類似表現も確認しておくこともできます。
各会話ダイアログの下部の解説も適切
対応レベルをHSK5級〜・中国語検定2級〜と想定しているので、メインの慣用表現だけでなく、下部の会話ダイアログ中の単語や表現でもその対象レベルでは理解しづらいだろうという部分には注釈が振ってあり、いちいち辞書を引く手間も省ける。
「新装版 中国語 四字成語・慣用表現800」のいまいちなところ
本当に800あるの?
目次と索引のところで画像で紹介した目次、実は目次に載っている慣用句をトータルすると800に満たないのです。
目次に掲載されている語の総数は実は617語です。(忘却曲線チェックシートを見てもらえればわかります)
それで、実際にはすべては数えてはいないのですが、途中に挟まれている「コラム」や、参考として掲載されている類似表現や反対表現で、参考程度に掲載されているものをすべて足したらおそらく800になるんだろうなぁ、といった感覚です。
ただ最初に触れていますが、あまりにも分量が多いと挫折してしまうので個人的にはこの分量は「1冊やりこなした」「コンプリートした!」という自信につながりますし、頻出語句を絞ってあって800すべて覚えなくても学習効果が高いので、この本の構成は決して悪くないと感じています。
日本語訳簡略化しすぎ
慣用句の意味、日本語訳を一個、多くても二個に絞り込んであるので時折ん?この意味で決めつけてしまっていいのか?と感じるものもあります。
例えば“贪小便宜”の意味は「新装版 中国語 四字成語・慣用表現800」の中では「うまい汁を吸う/得をとろうとする」とだけ書かれています。
確かにこの意味で使うことも多いので正しい日本語訳なのでしょう。けれども字の中に“贪”とあるように「けち臭いことをして得をしようとする」などの意味合いも加えて欲しかったな、と思います。
この点は紙面スペースの都合上仕方ないのかもしれませんが、使われるシチュエーションが限定されるような印象を受け、誤用する可能性につながりかねないものもあります。
新装版であって改訂版ではない
これつまりデザインが変わっただけですよ、ってことなんです。(対応レベルが以前は中検準一級・二級だった。ここ数年は準一級の問題が難化しているのでこの謳い文句の書き換えは適切)
たまたま図書館で新装前の版があったので借りてきてサラッと中身を見てみましたが、収録されている内容はおそらく全く同じだと思います。
変わったのはカラー。新装前は赤色ベースだったのが今回青ベースになっています。これが個人的にはあまりよろしくない。
確かに赤ベースだと長時間見ていると目がチカチカしてきますので色変更それ自体は問題ありません。
ただ、見てみると気づくかと思いますが、拼音のふりがながとにかく小さいので、青色ベースに黒字という同系の寒色を使っていると、とにかく拼音が見づらい。特に第三声と第一声の判別が難しく、虫眼鏡を用意しないときついです。
この点すごく残念です。
赤ベースに黒字だった時は暖色に寒色なので、字が小さいなりに肉眼で判別できなくもなかったのです。
通常本を出版する時ってゲラ刷りをチェック担当に渡したり、有識者に読んでもらってチェックしてもらうものかと思うのですが、新装にあたっては単なる色変更だから問題ないだろうとチェックが手薄になったんですかね?
もう少し一般ユーザーの目線でチェックできる担当とかモニター募集してチェックしてもらって作り上げて欲しかったなと残念に思います。
ついでにですが、p.114ページの前怕狼,后怕虎の拼音が第1声になっている間違い、旧版の間違いが直されないまま新装版にも引き継がれています。ただ、ご安心ください。一通り見た感じ誤記に関してはこの一点以外は気づきませんでしたので、他の箇所は問題ないでしょう。
「新装版 中国語 四字成語・慣用表現800」をやれば、中検準一級試験で2問は正答ゲットできるようになる!
「新装版 中国語 四字成語・慣用表現800」は対応レベルをHSK5級〜・中国語検定2級〜と想定しているので「これをやれば中検準一級の大問2,3は楽勝だ!」なんてことは決してありません。
ただし、直近の過去問を何年分かやった感じだと、平均して二問くらいは「新装版 中国語 四字成語・慣用表現800」の中の内容で対応できそうだな、選択肢の絞り込みに役立ちそうだな、という問題が出ています。
たかが二問、されど二問です。
中検準一級の難易度はとても高く、確実に取れる問題を一つ一つ積み重ねて増やしていくことが大事なのです。
ましてや、2025年3月以降出題形式が改定され、長文音声を聴いて、それを要約するといった問題が出題されるので、その問題でいったい何点くらい取れるかは全く想定できません。
そこで大問2、3の語彙力を問う選択問題で確実に得点していくことがより重要になっていきます。
2024年12月現在の直近の2回の試験問題(第112回、第113回)を例にとってみてみましょう。
第113回・準1級
大問2の空欄を埋めるのに適当な語を選ぶ問題。(皆さんの勉強のために答えについては記しません。興味のある方は意味を調べて答えを導き出すか、中検のWebサイトの過去問コーナーで解答を参照してください)
⑸ 调查结果显示,这栋建成不到三年就突然倒塌的大楼是典型的( )工程。
① 挖墙脚 ② 半边天 ③ 顶梁柱 ④ 豆腐渣
② 半边天 、③ 顶梁柱はP.62の同一ページに出現している語句なので、この本をやっていた人は一発で②、③を選択肢から除外できたことでしょう。
⑷ 据知情人( ),那家企业自十年前起一直存在严重的造假问题。
① 爆炸 ② 爆冷 ③ 爆料 ④ 爆炒
② 爆冷についてはP.98に「爆冷门」がありましたので意味を推測するのは容易でしょう。これは早々に選択肢から外せます。
大問3 下線部分の説明として適切なものを選ぶ問題。
⑹ 尽管他一直小心翼翼,但这次终于还是露马脚了。
① 比喻找到解决问题的方法。
② 比喻故意将弱点暴露出来。
③ 比喻偶然发现对方的秘密。
④ 比喻隐蔽的真相显露出来。
露马脚はP.155に掲載されていました。(これ、日本語の「馬脚を露す」とまったく同じ意味なんですが、じつはこの意味を取り違えて覚えてしまっている日本人も多く、「馬脚を露す」の意味をちゃんと覚えていないと誤答しやすい問題なんです)
ちなみに小心翼翼もP.126、137に掲載されています。
第112回・準1級
第112回では書籍に収録されている慣用句が割と多く出現、出題されていました。
その代わり听力の听写が文学的情景表現を含んだ文が読み上げられ、激ムズなっていたんですよね・・。
大問2
(9)你别( )的,丈夫在家带孩子很正常。
①大材小用 ②大惊小怪 ③大同小异 ④大醇小疵
これは①大材小用 ②大惊小怪 ③大同小异 の三つが本に収録されている問題で、本をしっかり勉強した人にとってはサービス問題。それぞれ①P.46②P.37、98、146③P.138、148に掲載されています。
(10)这次旅行才三天时间,只能( )了。
①举一反三 ②精益求精 ③走马看花 ④不求甚解
この問題に関しては答えを言ってしまいますが、③走马看花が答えです。本の中ではP.28に掲載されていて、会話ダイアログはまさに問題のシチュエーションと似ていて、「団体旅行ではざっと見て終わるだけになってしまう」、という意味で使われていました。
大問3
⑴ 这篇文章,开门见山地指出了当前的问题所在。
① 比喻说话写文章直截了当。
② 比喻说话写文章成熟稳重。
③ 比喻出现的问题非常严重。
④ 比喻首次提出意见或建议。
开门见山はP.76に掲載されていました。ただ、この慣用句は字を見れば何となく意味が想像つきますけど。
⑶ 我三年前在一家餐馆干过,后来被老板炒鱿鱼了。
① 指让人卷起铺盖离开,解雇员工。
② 指能把菜做得很漂亮,让人赞叹。
③ 指上班时间不好好做事,偷懒。
④ 指在活动中成为最主要的人物。
炒鱿鱼はP.37に掲載されていました。これも割と有名な慣用句なので知っていた方も多いかもしれません。
⑻ 最近工作很忙,家里简直成一锅粥了。
① 比喻让人生气。
② 比喻尘埃满地。
③ 比喻做做样子。
④ 比喻非常混乱。
一锅粥はP.51、56に掲載されていました。これも字面で想像できなくもないですが、初めて見た人はやっぱり意味に確信をもてないですよね。
まとめ
いかがでしたでしょうか?「新装版 中国語 四字成語・慣用表現800」、単に検定試験対策という目的でもかなり役に立ちますし、もっと肝心な「中国人とのコミュニケーションで役立てる」という目的でも非常に有用な学習書となっています。
会話ダイアログ音声がとても学習しやすい内容になっているので、机に向かえない時でも移動中の学習に効果をとても発揮してくれます。
また、Googleブックスでは旧版ではありますが、本の中身の50%くらいが読めるようになっていますのでご参考に。
中国語 四字成語・慣用表現800 – 林怡州 – Google ブックス
多くの”中国語学習者クラスター”と呼ばれる人たちからも、X、noteやブログで大変評価の高いレビューを目にし、支持を集めているこの「新装版 中国語 四字成語・慣用表現800」、買って絶対後悔しない一冊、と私も自信をもってお勧めできます。
その他の成語・慣用句を学ぶのにおすすめの学習書
「新装版 中国語 四字成語・慣用表現800」の紹介に関してはいったんまとめで結びとなりましたが、これ以外にもおすすめの学習書があるので紹介していきたいと思います。
中国語慣用句・成語学習のおすすめ入門学習書1位タイの「使ってみよう!中国語の慣用句・ことわざ・四字熟語」
「中国語慣用句・成語学習の最初の一歩はコレで決まり!」と、「新装版 中国語 四字成語・慣用表現800」を激プッシュしたものの、実はこれから紹介する「使ってみよう!中国語の慣用句・ことわざ・四字熟語」も最初の一冊としてふさわしい学習書で、どちらを成語・慣用句学習の入り口として薦めるのか、正直悩ましいところだったんです。
収録されている慣用句と四字成語の総数は500個。「新装版 中国語 四字成語・慣用表現800」の総計の数字「800」に比べるとだいぶ少ない印象を受けますが、前述したように「新装版 中国語 四字成語・慣用表現800」の目次に掲載されているのは617語なので収録語数に大した差は使った感じでは無いように感じました。
対象とする中国語学習者のレベルも「使ってみよう!中国語の慣用句・ことわざ・四字熟語」と「新装版 中国語 四字成語・慣用表現800」は似たような水準。大体中検2級からって感じです。
では同じような対象レベルなら2冊で収録されている語はほとんどカブるんじゃない?という疑問も持つことでしょう。
ざっと見た感じですが、確かにカブる語はそこそこあります。かといって、8、9割もかぶっているかというとそんなことはなく、「新装版 中国語 四字成語・慣用表現800」で目にしなかった語も沢山出てくる印象です。
両方勉強することで足りないところをちょうどよく補える、2冊の間にはそんな違いがありました。
「使ってみよう!中国語の慣用句・ことわざ・四字熟語」をやっている途中で時々「新装版 中国語 四字成語・慣用表現800」で見たことのある語が出てきた場合も、ちょうどいい復習になりますし、違った会話ダイアログでの語句の露出なので、こんなシチュエーションでも使えるんだ、とかこんな意味合いでも使うことができるんだと理解が深まるのがいいところです。
語研のWEBサイトで「使ってみよう!中国語の慣用句・ことわざ・四字熟語」を見てみよう
出版元の語研のWEBサイトにすごーく親切過ぎる、目次、ストリーミング音声再生ページ、サンプルPDFが用意されてますのでぜひ購入前に確認してみて下さい。
超親切な目次
※目次は語研のWEBサイトを開いて少し下にスクロールしたところに「目次 +」のようにプルダウンメニューが用意されているのでそちらをクリックして開いてください。
収録されているすべての語がピンイン振り仮名と日本語の意味まで併記されてサイトで共有されています。個人で学習する用途ならテキストをコピーペーストできるのでとても便利!
ストリーミング音声再生ページは1トラックごとに分かれていて使いやすい!
音声の内訳は、最初に単語が単独で発音され、その後2行の会話ダイアログが再生されるようになっています。
トラック名が超親切な音声ファイルのダウンロードのページもあり
音声ファイルの一括ダウンロードも可能です。
そしてこの音声ファイル、これもめちゃくちゃ親切な処理がなされています。
なんとトラックネームに成語、慣用句・ことわざとその掲載ページ数が付されているのです!
これが何が便利って、たとえばランニング中や混みあった電車での通勤中に音声を聴きながら勉強したい時、「あれ?この慣用句ってどういう字を書くんだっけな?」と確認する時、一瞬プレーヤーを開いて現在再生中のトラックをちらっと確認すればよいのです!
いちいち本を開かなくても確認できます。
「ながら学習」など時間の”二毛作活用”をしたい方にはすごーく便利な仕様なんです。
27ページまで確認できる太っ腹なサンプルPDF
これだけのページ数確認できれば、この学習書がどのようなものか把握するのに十分でしょう
この本についてもエビングハウスの忘却曲線チェックシートを作成していますのでご活用ください。
オンラインレッスンで学びながら成語、慣用句を身に付けたいなら「汉语口语习惯用语教程」(北京語言大学出版社)
かなーり古いテキストなのですが、それでもレッスン形式で慣用句を学ぶのには未だこのテキストの右に出るものは無いくらい内容が充実したテキストです。
私の過去の投稿記事を見ていただいた方はお判りいただけると思いますが、私はかなりの「オンラインレッスン野郎」です。
現在は平日週5で【CCレッスン】 を受講しており(以前は週7)、2021年から開始した総レッスン回数は885回 (368.8時間)となっています。
この記事を読んでいる方の中にも、何らかの中国語オンラインレッスンを受講中という方も少なくはないのではないでしょうか?
そういった方々で、「一日に中国語の勉強時間を確保できるのがオンラインレッスンの予習とレッスン中の時間しかない」とか、「どうせオンラインレッスン受けているのでレッスン中に成語、慣用句の勉強をしたい」という希望を持っている方もいると思います。
確かにオンラインレッスンで成語や慣用句を学ぶのには多くのメリットがあります。
口語の中に成語や慣用句は出てくることも多く、レッスンで成語や慣用句を題材にした教材を使うのは理にかなっています。
また、口語独特のニュアンスや直前直後で語が省略されている中で成語や慣用句が使われていると「いったいどういう意味になっているんだ?」と、戸惑うことも多くそんな時に中国語ネイティブ講師に根ほり葉ほり聞いて理解を深めるのはとても良いオンラインレッスンの活用法と言えます。
そんな方に「汉语口语习惯用语教程」(北京語言大学出版社)がおすすめなのです。
少し高めの中国語レベルが要求されるテキストではありますが、会話ダイアログの中にこれでもかっていうくらいに成語、慣用句がちりばめられています。
私も数年前、予習にひぃひぃ言いながらこのテキストでレッスンを行いました。
おかげでだいぶ口語の独特の言い回しに慣れました。
このテキストの各課の構成は、まず最初に会話ダイアログがあります。
太字フォントになっているのがこの課で学ぶ成語や慣用句で、会話ダイアログの後に続く「例释 」の部分で一つ一つその意味と、例文が記されています。
一課平均25個くらいなのでボリュームが多くこの部分も結構予習が大変です。
「例释 」の後に続く「练习」の部分では3種類の練習問題が出され、語句の組み合わせペア選択問題、穴埋め問題、フレーズの作文問題という構成になっています。
YouTubeで音声をアップしている方がいました。こちらの音声もご参考ください。